目盛りは水平

所感と備忘録

「それでも愛だけは、私のものだ」

Mitskiの新しいアルバム"The Land Is Inhospitable and So Are We"を、ちびりちびりと舐めるように聴いています。

音楽の知識がないので詳しいことが全く分からないのですが、今までの曲と違って、たくさんの人の気配がするのは一体何なの?と思い検索をかけたところ、オーケストラとフル・クワイヤが参加したようで。なるほど、実際に人がたくさんいたわけね。

今までは登場人物(Mitski)が、室内外問わず一人っきりで現実を過ごしているイメージがありました。でも今回は宇宙だとか、シナプスが発火しているような、この現実の我々が到達できない混沌の最中に存在している印象を受けることが多かったです。なんだろう。身体だとかの重さを持たない、魂とか概念のイメージかな。曲によって印象は異なるので、「この曲は一体どういう…?」と思いながら聴き続けています。

 

例えば"The Deal"を初めて聴いた時に記したメモには「火花が散るような 体を燃やしながら宇宙空間に突っ込んでいくような 蒸気機関車や馬が全速力でこちらへ向かってくるような」と書いてました。Gのかかり具合がすごかった。

そう、最近は「ノれるかどうか」みたいなところで音楽を聴くことが増えていたので、すっかり忘れていたのですが、曲によっては聴いた時に問答無用で体感(のようなイメージ??)するものがあって、実に面白いのです。これって皆感じるやつなんだろうか、だったら他の人の体感も聞いてみたい。

 

現段階では、"I Love Me After You"がひときわお気に入りです。初めて聴いた時に、日本の手遊び歌やわらべ歌の類を想起しました。具体的には何ていうジャンルなんだろう。

詞は、例えば短歌や俳句のように、描かれていない景色までも表していて、静かに悟る夜が強い。この強さは無理に力いっぱい引っ張るようなものではなく、「あれ?どうしてこんな当然の感覚が、今までどこかに行ってしまってたんだろう?」の強さです。

 

その強さでいうと、"My Love Mine All Mine"もそうでした。

Loveは日本語だと「愛」と訳されることが多い単語で、その定義は人それぞれ。だからMitskiの指すものと私のそれは、もしかすると全くの別物なのかもしれないけれど、それでも「そうだよなぁ。結局は愛しか、愛だけが、私のものだよなぁ」としみじみ同意することとなりました。

 

今回はMitski本人が曲の解説をする動画を投稿してくれて、ありがたいです。次の活動がいつになるか分からなくて残念がっていたかつての私に教えてあげたい。思ってるより早いし、大盤振る舞いしてくださるよ。

 

まだ聴き込めていないし、聴き込んだと自信を持てる時が来ない気もしますが、私の生活にひょっこり乗り上げたアルバムなので、丁寧に向かいたいです。